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「そもそもそんなの当たるのか?」
「おいおい。ご存知上代神社のおみくじだぞ」
上代神社。この地区にあり、夏はお祭なんかも催される地元民なら誰でも知ってるであろう神社。
しかし、おみくじなんて信じてもいない伊藤にはどこも同じに思える。
「そういうことに疎いのは伊藤らしいな」
「あそこって縁結びの神様でもいるんだっけ?」
「いや、なんの神様かとか何に御利益があるとかは知らないんだけど、とにかくおみくじが当たるとか願い事が叶うとかって地元の学生達には有名なんだよ。だからいろんな人がおみくじを引いていくし、絵馬に様々な願い事を書いていく」
「へー」
「そして、中には不思議な願い事もあったりする」
「ん?まさか」
「そのまさかです」
毎度お馴染み、山本が持ってくる日常に転がる謎。今日もこの男は何かを見つけてきたらしい。
「神社には絵馬がいっぱい括られてるだろ?それをさらーっと見てたら気になるものがあってさ」
人の願い事を盗み見るな、と言いたいところだが、ここはとりあえず先を聞くとする。
「これなんだけどさ」
言いながら、山本はスマホに収めた写メを見せる。
「いや、さすがに写真は撮るなよ」
「普段はしないよ。ただ、これだけどうしても見せたくて」
仕方なく伊藤がスマホに映った画像を見ると、アップにされた絵馬にはこう綴られていた。
『どうかこのまま来ませんように。
そして、会えますように』
「・・・なぞなぞ?」
「俺もそう思ったんだよ。来なければ会えるものなーんだ?みたいな」
なんだか確かによくわからない内容だ。誰かが面白半分に書いたのだろうか。
「それもあるかと思ったんだけど、もっと気になることが書いてあってな」
山本がスマホの画面を横に滑らせていくと、そこには見知った名前があった。
「・・・小川?」
伊藤は窓際の自分達とは教室において反対、廊下側に座る女子生徒に視線を移す。
小川は次の授業の準備をしているようで鞄から教科書などを出している。それを見て伊藤は、次が日本史であることを思い出す。
「面白半分で絵馬を書く奴には思えないだろ」
山本が言う。伊藤もそれについては同感だった。
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