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特別派手なグループに属しているわけでもない彼女は、女子としては珍しくどのグループの子とも仲が良く、男子にも人気がある。大人しめだが、決してノリが悪いわけでもないのが理由だろう。
同級生より何処か大人びているところは小学校から変わらない。小川は伊藤とは小学校の同級生でもあったため、中学から同じ山本よりも以前の彼女を知っていることになる。
「で、この不思議な絵馬を偶然見つけるだなんて何か縁があるのではないかと思ってきてだな。俺は思い当たってしまったわけだ。もしかして運命の相手はあいつなのではないかと!」
「いや、それはないだろ」
「なんでだよ!」
「だってあいつ彼氏いるから」
「え!誰!?」
そういうことは知らないのかよ。
「お。噂をすればなんとやら」
「え?」
山本の後方から一人の男子学生が声をかけてきた。
「なあ、伊藤。さっきの数学の問題なんだけどさ」
その男を見て山本が言う。
「中村・・・お前かよ」
「は?何?」
「ああ、いやいや。何でもない。数学の問題?」
咄嗟に伊藤が取り繕う。少し気になりながらもとりあえず中村は伊藤に続けた。
そんな中村を見ながら伊藤は、山本には申し訳ないが自分が女子でもこの男を選ぶだろうと思う。見た目は好青年、性格も良く、それでいて男子と下ネタで盛り上がることも出来るいわゆる良い奴。つまり、小川と中村はベストカップルなのだ。
「ここがよくわからなくて」
「ああ、そこならこうすれば」とスラスラ解く伊藤に「居眠りしててそれは最早嫌みだろ」と山本が不満気に呟く。伊藤は数学が得意だった。ちなみに生物だけは山本には敵わない。
「さすが伊藤。さんきゅー」
席に戻ろうとする中村を山本が呼び止めた。
「中村。クリスマスの予定は?」
「クリスマス?そりゃ、まあ、ねえ?」
と少しにやけながら伊藤に謎の同意を求める。
「くそー!おい、中村。気をつけろよ。油断してるとあっという間に破局だぞ」
「なんだよそれ」
「気にしないで。こいつひがんでるだけだから」
笑いながら自分の席に戻る中村。幸せ者の余裕だろう。
「あながち間違いではないかもしれないぞ。だって、あの絵馬の内容はちょっと危ういだろ。『会えますように』だぞ?小川には中村とは別に待ち人がいるんだよ」
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