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心地のよい香りを感じたのである。と、同時になぜか懐かしい感じがした。
風が吹いて来た方にふと目やると、古びた今にも壊れてしまいそうでやっと原型を残し、
どことなく申し訳なさそうにも感じながら立っている長椅子があった。
そしてその椅子に絶対的に不釣り合いな美しい少女が本を読みなが座っている。
どんな本を読んでいるか分からないが、時折笑顔を浮かべている。
想像するにコミカルな恋愛小説か何かだろう。
でも、その笑顔は陸が今まで見たことがないものだった。
また、少女の頬は陸がその手で触れたら壊れてしまいそうなくらい透き通ったガラス細工で出来た人形のようであった。
けれど、少女の頬には小さなほくろがあり まるでそれが、
「私はちゃんと生きた生身の体なのよ、ガラス細工なんかじゃないのよ。」と
少女の代わりに言っているようにも感じた。
でも、本当にほくろがなければまぎれもなく人形のようであるが、ほくろがその少女の人間としての美しさを演じているのかもしれないと思った。
陸は自分でも分からないが、なぜかそのほくろに陸自身が救われた気がした。
時折暖かい風になびく髪がまた、少女の美しさをより引き立たせている。少女はあどけなさがのこる顔をしながらそのなびく髪を押さえまた笑顔を浮かべている。
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