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上も下も分からない遠近感さえ掻き消える白の中、涼は立ちすくみ思わず目を擦った。
(なんだこれ……?)
眉根を寄せながら一歩、二歩とその空間を歩いてみる。すると、歩を進める度に白い空間全体に青白い光の線が走り、一瞬何かの幾何学模様を描いたかと思えばすぐさま消えてしまう。
その光景は涼に一つの既視感を与えた。
(なんかの回路みたいだな……)
驚きはしたが不思議と恐怖感はない。
この空間がなんなのか? どこに繋がっているのか? そんな子供じみた好奇心だけが身体を満たしている。
それは涼自身何か釈然としないものを感じさせる心の動きだった。
例えるなら何かのバグ。いやバグなんて偶発的な欠陥じゃない。もっと意図的で利己的な何か。
長谷部 涼という存在を乗っ取られ、書き換えられているような感覚だ。
もし、今自分の感じている馬鹿げた感覚が的を射ているのならば――
(これをやってる奴はさぞお愉しみだろうな)
確信めいた仄暗い感情に思わず口の端がつり上がる。
そう。いつだってそうだった。
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