第4章 助けた存在は

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第4章 助けた存在は

少年は彷徨っていた意識の中から少しずつ抜け出す、まるで水面から手・頭・顔・胴体と徐々に上がっていく感覚だった、そして少しずつ瞼を開けた先には、いつもの見慣れた光景が広がっていた。 あちこちに修理された跡のある天井、そして草に似た妙な匂いがほんのりと鼻に入り、視界が慣れてくると天井に白い煙が漂っている のが分かる、少年が少し手を動かすと布の感触がする。 しかしその布の触り心地は初めてだった、少しザラザラしていて若干花のような匂いがする、そして体全体の感覚が戻ると、自分の体が温かい事に気づく。 少しだけ額に汗が滲み出ていて、口の中がなんだか苦く感じる、試しに起き上がろうとしたが腰と頭に激痛が走り、「っ!!!」という情けない声を出して動けなくなってしまう。 「あっ!!!気がついた?!」 その声は聞いた事の無い、「人間」の声だ、少年は焦りと恐怖で無理に体を動かそうとするが、その場から少し動けただけで痛みに耐えられずに蹲ってしまう。 痛みに必死に耐えている少年の背中を、暖かく柔らかい手が撫でているキセキ、幸い背中の部分はかすり傷が1・2カ所あるだけだが、背中以外の場所はかなり痛々しい。     
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