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中章 記憶の片隅
「お父さんっ!!!行かないで!!!」
「・・・・ミヤ・・・・・お前は来るんじゃない、なるべき遠くに逃げるんだ!!」
「嫌だ!!!嫌だ!!!」
「行くんだ!!!頼むから!!!」
朦朧とする意識の中で聞こえた過去、「生きたい」と願っても、「死にたい」と願っても、メリットとデメリットの天秤は水平のままだった。
何かと言い訳を探っても、誰にもぶつけられない駄々をこねても、結局は何も変わらなかった、少年は何度も自分に問う、「生きる意味」を。
未だに少年を縛っている過去と、希望が見えそうで見えない未来、それを表す様に少年の視界は灰色だった、まるで雲の中を彷徨っているかの様な感覚だ。
でも何故かその視界の灰色が、徐々に白くなっている、生きるにしても死ぬにしても少年は恐れを感じていた、それと同時に少年は思い出していた、また過去の記憶だった。
「母さん、僕が生まれて幸せだった?」
「ええ、とっても幸せよ。」
そう言って母は少年を抱きしめる、その温もりが何故か今思い出していた、生に対する執着か、それとも死の恐怖を無意識に誤魔化そうとしているのか、少年自身も分からない。
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