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彼女はいつも、不思議なモノと一緒にいる。それは普通の人には見えないモノ。彼女が私の前に現れる時、それはそのモノたちの話をする時だけ。今日も、彼女はやって来る。不思議なモノを連れて。
学校の裏手にある山の中で、彼女は何かを探していた。私はそっと、近づいてみる。すると、遠目からは見えなかったが、彼女のそばに人の形をした何かがいた。少し驚いた私は後退りした拍子に小枝を踏んでしまう。パキッと乾いた音が響くと、彼女がバッとこちらを向いた。振り向いた彼女は殺気のようなものを発しているが、音の正体が私だとわかると、笑顔を浮かべた。その不器用な笑顔に私はもう慣れつつある。
「こんにちは。」
「・・・何してるの?」
「探し物、この子の。」
彼女が隣にいるモノを指差した。改めてみると、人の形はしているが、目や鼻がなく、口だけが存在している。女の子だろうか、薄い桃色の甚平を着ていた。
「何を探してるの?」
「草履。右足だけ、裸足なの。」
右足に目をやると、確かに裸足だ。
「どうしてないの?」
「隠されたの。意地悪な人に。」
ドキリとした。心臓がバクバクと焦り始める。彼女は気にせずに続けた。
「この子はいじめられてたの。それで、山の中に草履を隠されて、探しているうちに帰れなくなっちゃったの。」
「そう、なんだ・・・・。」
帰れなくなる。その言葉だけが、私の頭の中にグルグルと残った。
「酷いよね、この子は何もしていないのに。今でもずっと探してるの。」
彼女の目が私を捉えた。
「あなたは、何を探してるの?」
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