1つ目 あの子の靴

4/4
前へ
/4ページ
次へ
コンクリートは土よりも冷たいんだと思いながら歩いていた。靴下が汚れることなど気にもせずに。 「明日には見つかると思うよ、靴。」 山から帰るときに彼女はそう言った。本当に見つかるだろうか。学校に行くのに靴下のままというわけにはいかない。そんなことを考えながら家までたどり着くと、扉の前に見慣れた顔があった。幼馴染だ。なんだか、申し訳なさそうな表情で立っている。私に気づくと、小走りで近寄ってきた。 「どうしたの?」 「これ!」 差し出してきたのは私の靴だった。 「返しとく。いらないし。」 「じゃあなんで盗ったの。」 「盗ったわけじゃないわよ。玄関口まで来たら返そうと思ってたのに、あんた山に入っていったんじゃない。それで、どうしようもなくてここで待ってたの!」 幼馴染は靴を私に押し付けると、さっさと帰っていった。私はそれを見送ると、家に入り、一息つく。靴箱に靴を直して、ふと思った。 ーーー私はなぜ、山に靴があると思ったのだろう?
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加