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コンクリートは土よりも冷たいんだと思いながら歩いていた。靴下が汚れることなど気にもせずに。
「明日には見つかると思うよ、靴。」
山から帰るときに彼女はそう言った。本当に見つかるだろうか。学校に行くのに靴下のままというわけにはいかない。そんなことを考えながら家までたどり着くと、扉の前に見慣れた顔があった。幼馴染だ。なんだか、申し訳なさそうな表情で立っている。私に気づくと、小走りで近寄ってきた。
「どうしたの?」
「これ!」
差し出してきたのは私の靴だった。
「返しとく。いらないし。」
「じゃあなんで盗ったの。」
「盗ったわけじゃないわよ。玄関口まで来たら返そうと思ってたのに、あんた山に入っていったんじゃない。それで、どうしようもなくてここで待ってたの!」
幼馴染は靴を私に押し付けると、さっさと帰っていった。私はそれを見送ると、家に入り、一息つく。靴箱に靴を直して、ふと思った。
ーーー私はなぜ、山に靴があると思ったのだろう?
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