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タバコの香り
人通りのあまり多くない道である。最寄りの駅から家に帰る途中、ゆるりと月を見たりなどしながら歩く私を後ろから追い越す人がいた。
その人は私のよく知るタバコの香りをまとっていた。
恋人の吸っていたものと同じ、ひどく懐かしく、もしかしてと淡い期待を持ち、私はハッと顔を戻してその人を見る。
確かに覚えていたその香りは恋人のものでは無かった。
別れてから三年も経っているのに、いまだに彼を忘れられないらしい。
「ハッ…」
乾いた笑いが出る。
彼は今頃何をしているだろうか。
暗い夜道をタバコの残り香を追うように独り歩いた。
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