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プロローグ
狭い四角い部屋。
何年か前から、俺…草薙祐樹はここに閉じ込められている。
視界に映るのは狭い四角い部屋にある唯一の鉄の扉。その扉の上部にある小さな格子の嵌った窓。
それと…狭い四角い部屋の壁から伸びた…白い手。
部屋の隅っこで膝を抱え丸くなっている俺の前で薄暗い部屋の中で格子から漏れる僅かな光で白光している妖しい程美しい白い手。
ゆらゆらと揺らめきながら、その白い手は何もない部屋を彩る。まるで風に揺れる白い白いシーツのように舞えば、悪戯に俺の頬や頭を撫でる。
優しく、優しく…。
その優しさは俺が大人しく、この美しい手に従っている間だけ…俺をこの手から引き離そうとすれば、この美しい手は再び狂気を孕み爪を立て、肉を引き裂く。
美しい白い檻のような手から、俺は逃れられない…。
誰も、俺をこの美しい手から救い出せない…。
今日も薄暗い部屋の中。
ゆらゆらと揺らめく、美しい白い手だけを見詰めて過ごす。
何故、こんな事になってしまったのか…。
膝を抱え、何度も何度も繰り返し思い出す。
後悔からなのか、もう思い出してもどうにもならない事だと分かっている。それでも、思い出す事しか出来なかった。
全ての発端。
それはもう、何年も前。
俺が小学生の時だ。
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