白い手~幼少期~

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靴を脱ぎ捨て、急いで部屋の中に上がり込む。廊下を進めばリビング。その横にキッチン、トイレ、お風呂。目についた扉を片っ端から開け放つ。一番広い部屋、ここはきっとお母さんとお父さんの部屋。 僕は最後の扉へと向かう。 ここが僕の部屋だ。 今まで見た部屋は全部綺麗だった。壁紙にも汚れ一つなく、真っ新。前の部屋は結構古くて壁も塗り壁だった為、壁紙なんてなかったしちょっと暴れたら壁が落ちて、よくお母さんに叱られてた。 ドキドキとしながら部屋の扉を開く。少しずつ開かれる扉から漏れる柔らかい光で日当たりが良いのが分かる。半分ぐらいまで開ければ、残りを一気に押し開いた。 ふわっと柔らかい光が広がり僕の身体を包んだ。最高の瞬間だった。 部屋に駆け込んで、部屋の中央で大の字に寝転がる。電気はついてないが、昼間は陽の光だけで十分だ。暫く、広い部屋を堪能するようにゴロゴロと転がれば、玄関から物音がしてお父さんとお母さんが漸く来たのだと思った。 身体を起こし、玄関に向かって大声で呼びかける。 「お父さん、お母さん!!遅いよ、僕の部屋ここで…っ。」 声を張り上げている最中。 目の端にひらりっと動く物を捉えた。思わず口を噤む。その動く物を確かめようと視線だけを動かした。 それを目で確認すれば、息を飲んだ。恐怖で声は出なかった。声だけじゃなく、その場から動く事も出来なかった。 壁から無造作に手が生えていたのだ。 壁から生えた人の肘から先がひらりと舞うように動いた。 .
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