白い手~幼少期~

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恐怖で竦んだ僕を気にする事なく、手はひらひらと動く。僕は怖くて目を離せない。白い手が手招きするように動けば、僕の恐怖は限界に達した。 「お母さん!!お父さん!!」 勢いよく立ち上がると脇目も振らず駆け出した。もし、立ち止まってしまったらあの白い手に捕まってしまうかもしれない。捕まってしまったら…、恐ろしい妄想ばかりが頭の中を駆け巡る。 靴下が滑り転びそうになりながら、這いずるように玄関まで駆ける。玄関までの道がやたら長く感じて、涙でくしゃくしゃに歪んだ視界は慣れない間取りのせいで柱に肩を打ち付けた。痛みを堪えながら、玄関まで辿り着く。 「お母さん!!」 玄関で靴を脱ごうとしているお母さんの背中に勢いよくしがみつけば、そのまま大声で泣きじゃくった。お母さん、お父さんが驚きで目を見開いてしがみつく僕を引き剥がそうとする。僕は死に物狂いでお母さんの服に指を絡めた。引越し業者の人達が騒ぎに駆けつけ、辺りは一瞬で慌ただしくなる。 お父さんはそんな引越し業者の人達に頭を下げ、引越しの準備を進めて貰えるように促した。お母さんはどんなに引き剥がそうとしても離れない僕に諦めたように溜息をつきながらも、頭を優しく撫で落ちつかせようとしてくれた。 .
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