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頭を撫でるお母さんの手に少し落ち着くと、顔を上げてお母さんを見上げる。お母さんが僕の顔を覗き込むようにしゃがみこんで、服を握った手を優しく包み込んだ。血の気がなくなるほど、服を握りこんだ僕の手は少し痺れていて、中々思うようには動かなったがゆっくりと力を抜いて優しく包み込むお母さんの手を握る。
「どうしたの?お部屋、見たんでしょ?広くて日当たりも良くて……。」
「あの部屋は嫌っ!!」
少し落ち着きはしていたものの、お母さんの言葉で先程視たものを思い出す。お母さんの言葉を遮るように僕は叫んだ。お母さんが困った顔をして僕を見詰めていると、お父さんが来た。
「荷物を運び込むから、祐樹を部屋に連れて行ってくれ。ここに居たら危ないしな。」
お父さんの言葉に僕の表情は恐怖に歪む。握ったお母さんの手に縋り付き、必死で嫌だと訴えた。
「嫌、あのお部屋は嫌なの!!」
必死で首を振る僕をお父さんは無視して、お母さんの背を押し部屋へ連れて行くように促した。頑として動こうとしない僕をお母さんが抱き上げ、部屋へと連れて行こうとする。
お母さんに抱き上げられるも僕は手足をバタつかせ暴れる。降りて逃げなければ、またあの部屋に入らなければいけない。しかし、必死の抵抗も虚しく僕は強制的に逃げて来た道を戻らされた。
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