4. 再び

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4. 再び

「この電車は、折返し鶴ヶ嶺発ぅ~桜ヶ丘行きとなりまぁ~す。ご乗車になって、お待ち下さぁ~い」  私、ミナミ(23歳)という名前の女は、来た時と同じ号車の、今度は反対側の角の席に座っていた。相変わらず、肘掛けに体を預けながら、ぼぉっと車内を眺めて。  車内がガランとして誰もいないのは、着いた時と一緒。  もちろん、私の服も変わってない。靴もリュックも、そんまんま。  違うのは、車内に差し込んでいる光が夕焼けオレンジだってこと。  それにポスターケースが手元にないこと。  最後に左頬が晴れていてジンジンと痛むこと、ぐらい。  私の気持ち的には、たいして変わらない。どうせ、駄目だって思っていたから。  けれど、ひとつだけ悔やませて。せめて私のデザイン画ぐらいは見てほしかったな。  ハナっから無理だった。  開口一番、叱られた。髪も服も。「なんだその髪は!」って。  褒められるなんて思っていなかったけれど。娘だよ? 一応。 「おかえり、ミナミ」って、言えないかな…  頭きて、かっとなって、言ってしまった。 「二人とも、私のこと嫌いなんでしょ?」って。 「だって私、帰ってからひと事も名前で呼ばれてない!」     
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