第三章

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 ――無論だった。  小さく喉を鳴らしてしまう自分が情けない。  前髪を撫でた右手は吸い寄せられるように、今度は彼女の唇へと向かっていた。  おっかなびっくりとしながらも、暁は幸の唇に触れた。かするか、かすらないか程度の微妙なタッチで。でも、それだけで十分だった。幸の唇は、信じられないくらいに柔らかかった。  顔についたチョコを舐めとられた時のことを思い出して、更に恥ずかしくなった。 「んん……」  幸はむず痒そうにしながら体を動かす。機関銃のような自分の鼓動がうるさいったらない。 「幸……」  いよいよ衝動が抑えきれなくなっていた。暁は頭が真っ白になりながら、幸の唇に顔を近づける。  ゆっくり、ゆっくりと二人の距離は狭まり――。  そして、幸の吐息が唇に触れた時だった。 「――あ」  突然に遠のいていく意識と、遠のいていく彼女との距離。  ばふ、と音を立てながら、暁の体は枕に引き寄せられた。  ――ああ、そういえばそうだ。  暁は消え入りそうな意識の中で、納得しながらこう呟いた。  ――夢って、いつも一番いいところで覚めちゃうんだよなぁ。
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