部落

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西暦300年  実りの秋。風が疾しる黄金の田。 「今年もなんとか実ったな。収穫まで無事でいてくれよ?」 高床式倉庫から見つめる青年が1人。髪が腰まであり、未来を見通すのかのような瞳、眼力。鼻はスーッと整っていて眉毛はどっしりと太い。ほっとしているようだ。 「エンヤ―!」 青年は呼びかけに対し、地面を見つめる。 「エンヤ!今日は剣術だ!覚悟しろ!」 泥まみれの少年。 「おー。チムだ。強くなったか?ハハッ。」 「あったりめーだろっ!はやく降りて来いよ!」 「今、行く。待ってろ。」 土手を走る2人。それを見て走って集まってくる子ども達。 今日も森の手前の広い所で特訓がはじまった。 「さぁ、チム!かかってこい!」 「うりゃー!」 「最初の発声はヤーだろ?」 「どうでもいい!」 「ははっ。こうするとだな、身長差で届かねーんだよ!」 「あ、ずるっ!」 「そうしたらどうするんだ?」 「こうだ!」 「そうだ!いいぞ、チム!」 「エンヤさまー!」 「チムー!いけー!」 わいわいやっていると 「エンヤ。」 1人の年寄りがやってきた。 「わっ。おじい!こ、これは、遊んでいるわけではなく立派な訓練です。どうしました?奥からお出でになるなんて。」 「話がある。子ども達を見送ったあと、戻ってくるように。」 「はい!」 爽やかな笑顔で返すエンヤ。 「今日は終了だ。」 「また明日。川行こう!」 水浴びをするチムとエンヤ。 「チム、お前、また髪を切っただろ?」 「あ、分かる?」 「お前の年頃になったら伸ばしっぱなしにしておかないと。首が護れない。戦力にもならないし死ぬぞ?」 「重いし痒い!良く腰まであるぜ。」 「皆を敵から守る為だ。もう切るなよ?」 チムの顔についた泥をとってやるエンヤ。 「おじいの話ってなんだろうな?」 「さぁ?奥からお出でになるって事は・・・わからん!気にしたって仕方ねぇ!」 「何それ。ハハッ。」 「じゃぁ、また今度な!」 「おう!気をつけてな。」
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