部落

3/3
前へ
/52ページ
次へ
森の中に佇む集落の宮にエンヤは来た。 衛兵が4人いる。 「エンヤ様。お待ちしておりました。」 「おじいの所へ。」 「こちらです。」 目に布を当て先導してもらって宮を歩く。 いつ何時、この集落が襲われてもいいように複雑な作りになっている宮。 「エンヤ様をお連れしました。」 「うむ。」 「おじい。」 「そこに座りなさい。」 胡坐をかいておじいの正面に座る。 おじいは村の支配者。 エンヤは孫にあたる。 配膳される酒と肴。 「食え。」 「いただきます。」 おじいの様子を伺いながら飲むエンヤ。 「エンヤ。」 「はい!」 「外は賑やかなようだな。」 「はい!奇襲もありませんし、子ども達は元気です。今日、見て頂いたチムのように男児は訓練されています。」 「そうか。」 笑うおじい。つられてエンヤも笑う。 「エンヤ。」 「はい!」 「お前は先日じゅうとむっつになったな?」 「はい、そうです。」 「ふむ。」 沈黙の間 「おじい?あの、どうしました?」 「エンヤ・・・。」 「はい!」 「外の世界に興味はあるか?」 「外ですか?」 「左様。外にはこの集落のようなものがいくつもある。」 「は、はぁ。」 良く分からない話になってきたと頭をポリポリ掻くエンヤ。 「部落を纏めて集落、集落を纏めて村。村を纏めて国じゃ。」 「おじい、良く分からないです。」 「エンヤ、お前は国に行ってもらう事になった。」 「え?」 「国中から男が集まる。そして教育というものを受ける。剣術、槍術、弓術、文字、詩、舞、乗馬、沢山の事を学ぶ。」 酒を飲みながら淡々と話すおじい。 エンヤは黙って聞いていた。 「男を集めると国から伝達があった。容姿、家柄、武術が長けているものを選び、国に送る。」 「そ、そうなんですか。」 「明日、立ってもらう。もう村に帰ってくる事は無いだろう。」 「え?!」 「お前は、今日からエンヤヒコと名乗れ。」 「おじい、ちょっと待った!」 「ヒコと名乗るのはそこの出身である男児という意味じゃ。しっかりと役目を果たすように。それだけじゃ。いいな、明日じゃ。」 「ちょっと、おじい!いくらなんでも!母上、父上は!」 「わしに逆らうとどうなるか知っておるな?」 「つ、追放です。」 「よろしい。」
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加