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森の中に佇む集落の宮にエンヤは来た。
衛兵が4人いる。
「エンヤ様。お待ちしておりました。」
「おじいの所へ。」
「こちらです。」
目に布を当て先導してもらって宮を歩く。
いつ何時、この集落が襲われてもいいように複雑な作りになっている宮。
「エンヤ様をお連れしました。」
「うむ。」
「おじい。」
「そこに座りなさい。」
胡坐をかいておじいの正面に座る。
おじいは村の支配者。
エンヤは孫にあたる。
配膳される酒と肴。
「食え。」
「いただきます。」
おじいの様子を伺いながら飲むエンヤ。
「エンヤ。」
「はい!」
「外は賑やかなようだな。」
「はい!奇襲もありませんし、子ども達は元気です。今日、見て頂いたチムのように男児は訓練されています。」
「そうか。」
笑うおじい。つられてエンヤも笑う。
「エンヤ。」
「はい!」
「お前は先日じゅうとむっつになったな?」
「はい、そうです。」
「ふむ。」
沈黙の間
「おじい?あの、どうしました?」
「エンヤ・・・。」
「はい!」
「外の世界に興味はあるか?」
「外ですか?」
「左様。外にはこの集落のようなものがいくつもある。」
「は、はぁ。」
良く分からない話になってきたと頭をポリポリ掻くエンヤ。
「部落を纏めて集落、集落を纏めて村。村を纏めて国じゃ。」
「おじい、良く分からないです。」
「エンヤ、お前は国に行ってもらう事になった。」
「え?」
「国中から男が集まる。そして教育というものを受ける。剣術、槍術、弓術、文字、詩、舞、乗馬、沢山の事を学ぶ。」
酒を飲みながら淡々と話すおじい。
エンヤは黙って聞いていた。
「男を集めると国から伝達があった。容姿、家柄、武術が長けているものを選び、国に送る。」
「そ、そうなんですか。」
「明日、立ってもらう。もう村に帰ってくる事は無いだろう。」
「え?!」
「お前は、今日からエンヤヒコと名乗れ。」
「おじい、ちょっと待った!」
「ヒコと名乗るのはそこの出身である男児という意味じゃ。しっかりと役目を果たすように。それだけじゃ。いいな、明日じゃ。」
「ちょっと、おじい!いくらなんでも!母上、父上は!」
「わしに逆らうとどうなるか知っておるな?」
「つ、追放です。」
「よろしい。」
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