国の中枢、都へ

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オトヒコを返したあとにすぐ迎が来た。危なかった。 「お前がエンヤヒコだな?」 「はい!」 「籠に乗れ。」 馬に乗ったままそういって止まった。 男二人が担ぎ俺を浮かせる。 なんて重労働なんだ。 男は籠のペースに合わせて馬を進ませる。 ずっと乗っていると籠が大きく揺れた。 「何をしている。」 籠の前方を担いでたおじさんが蹲った。 「申し訳ありません。」 「担げ。早くしろ。」 「は、はい!」 数時間後、また前に倒れた。 「歯向かうのか?」 「いいえ。」 覗くと肩が紫色で限界は目に見えていた。 倒れる。 「全く、何をしている!」 ヒュッという音がしたかと思うと血が飛んできた。 「おい!いくら何でも酷いだろう!」 俺は堪らず籠を出た。 「ほう。奴隷を庇うか。」 「奴隷?!」 「都のやり方だ。口出し無用。」 「もう担げないのは目に見えているだろう?前に進まない。俺が担ぐ。」 「そんな事されちゃぁ・・・やめてくだせぇ。」 なぜ、俺がやめろと奴隷に懇願されるのか。 「いや、担ぐ。」 悲鳴が挙がる 「やめておけ。お前は献上品だ。」 「献上品?」 「何も言われてないのか。悲しいことだな。」 「わけわかんねーけど、献上品なら俺に鞭は当てられないな?」 「正装服を汚すわけには、いかん。さぁ、担げ。」 「へぇ。」 俺は、服を脱ぐ。 「何をしている。籠にもどれ。」 「籠に乗らなければ服が汚れる。」 「は?」 「俺は籠に人を入れて持った事は無い。」 この時代、下着というものはない。 全部脱いで裸になった。服を畳んで籠に入れる。 「歩くだけなら出来るだろうよ。3人で交替制を取る。服は汚れない。何か文句あるか?」 男はしばらく考えて 「好きにしろ。」 と言った。
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