国の中枢、都へ

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「止まれ。今日はここまでだ。」 「ふぅ・・・。」 籠を下す。 「肩を見せてくれ。」 「ひぇっ。触らないでくだせぇ。」 「え?」 「ヒコは尊い身分。それが奴隷に触れば穢れる。奴隷は死罪だ。」 「ふ~ん。あんた、前をずっと見ていてくれ。」 「ん?何故だ?」 「あんたが見なければいい話だ。」 「なるほど・・・面白い。見ていてやろう。」 男は前を見た。 「大丈夫だ。」 「ひぃぃっ。」 「肩が潰れてる。肩を腕に挙げる事もできないだろう。かなり痛いぞ?我慢だ。」 ゴキッ 「ぐわぁぁぁぁっ。」 「これでいい。あとはしばらく、重たいものを持たなければいい。お前さんも肩を見せてくれ。」 「俺は大丈夫です。」 「本当に?」 男の肩の衣をずらす。 骨は変形していないが濃い紫色だ。 「川があったらな。二人とも冷やさなければ。」 「エンヤヒコ。」 「はい!」 「疲れた。」 奴隷たちから身を遠くする。 「どうぞ。降りてください。」 「全く、大した奴だお前は。」 そういって馬から降りる。 「俺はミサギだ。お前を都まで無事に届けるのが役目だ。よろしくな。」 「はい!」 「おい、奴隷ども。飯だ。取りにこい。」 「これが飯?」 「そうだ。」 いけ好かない。ただの生米じゃないか。しかも片手にちょっと。 舐めたら終わる。 「都までどのくらいかかる?」 「七つの夜明けが来たぐらいだろう。来い。」 遠くに奴隷たちを置き、俺たちは雨風しのげる穴に入った。そこで火を焚く。 「ほれ、めし。」 「ありがとうございます。」 玄米を煮絡めて干した米だ。 「ようやるわ、お前。カッカッカッ。」 意外にも男は笑顔だった。 「ミサギ・・・。」 「仕事上な。良心が痛まないわけじゃないよ。」 「もっと悪い人かと思った。」 「悪い人さ。奴隷からしてみればな。」 「じゃぁ・・・。」 「それは無理だ。」 言葉を遮られた 「奴隷は奴隷。立場の管理も俺の仕事よ。しっかし、お前みたいなヒコは初めてだ。皆、長から話を聞いて、指導され・・・反抗されたのは初めてよ。」 「そういうもんですか。」 「裸は寒いだろ。これを纏え。」 「え?これじゃ、ミサギが風邪を引く。俺、こういうの強いんで。」 「だろうな。だが着ておけ。朝と晩は冷える。」 毛皮を貰った。 この人は悪い人じゃない。
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