第十七章 夜は静かに嘘をつく 二

6/11
37人が本棚に入れています
本棚に追加
/206ページ
「違うよ、私は3Pはしないからね。一人ずつと寝た……それで、死保というのは信じたよ。でも、菩薩にどうしても会いたかった」  俺が新悟を見ると、新悟は目を逸らしていた。新悟が目を逸らすというのは、俺に隠し事をしている時だ。新悟も自分の未来が知りたくて、自分から中村と寝てしまったのであろう。  でも、得られた未来は分かっている。死保にいる限りは、成仏が終わりであるのだ。 「二人の未来から、菩薩の行動を予測して、弁当を持って出かけたよ。それで、菩薩の持ち帰りに成功した」  中村は、菩薩という存在が、どんな説法をし、どんな救いをするのか興味があったらしい。そして、俺は中村に近付いたのではなく、中村が俺を待ち伏せしていたので、出会えたらしい。 「菩薩は、想像以上に綺麗な姿で、誘拐している気分だったよ……」  中村は寝たフリをしながら、俺を観察していたという。明海の存在も知っていたので、俺が猫と喋っていても疑問には思わなかったが、変だとは言っていた。 「猫も綺麗だけどさ……喋るのは、どうかと思ったよ……」  中村はビールを飲むと、次のビールを探していた。一ノ瀬が冷蔵庫からビールを持ってゆくと、乾杯されていた。 「市来はさ、初めて見た時、ちょうど、日光が後にあってさ。キラキラと光っていた。それで、私のおはぎを真剣食べる姿に、ノックアウトされたよ……かわいい!!!!」  でも、中村は俺の料理を食べて、俺の姿を見て、自分の誤りに気付いたらしい。 「菩薩は自分で手に入れるものだった。菩薩の飯は美味くて、菩薩は共に生きようとする。菩薩の笑顔を見る為に、自分は最善を尽くさなければいけなくなった」、  中村は占い師と、競馬という今の生活は変えられないが、死保の協力をしてくれるという。 「千人の未来と、競馬の予測を使ってもいい。給料は貰うけど、条件は市来の飯だからな」 「俺が料理をする時は、食べてもいいですよ」  中村がやっと手を離してくれたので、俺が起き上がると、新悟が横に座った。 「新悟……」  俺が何か言おうとすると、新悟が俯いていた。 「その子は、兄の未来を知りたかったのさ。それで、私は菩薩の未来は、人のレベルでは測れないと諭した」 「俺の未来か……」  ここで、分かった事は、中村は死保のメンバーの未来は見えないという事だった。死んでいるので、未来など無いのかもしれない。
/206ページ

最初のコメントを投稿しよう!