第十七章 夜は静かに嘘をつく 二

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「死保留中の状態は、未来が無いのかもね」  中村は一ノ瀬の未来も見ようとしたが、光以外は無かったという。 「一ノ瀬さんも、中村さんと寝たのですか……」  スカウトに来て、相手を寝て口説くというのも、正攻法ではない気もする。 「まあ、美人は口説くのがマナーですからね」  一ノ瀬が言うと、いやらしさがなく、そのままに聞こえてくるので不思議だ。 「それにしても、市来はハムスターみたいで可愛いよな。私の腕の中で、もぞもぞとしていて、抱き締めるとふんわりとする」  これは女性に言われたくない。出来れば、俺が彼女に言いたい台詞であろう。 「私はさ、義父と寝て、この能力に気が付いた。そして未来は流動している事も知った」  中村は、義父をより悪いパターンへと追い込み、保険金を手にした。他の虐げられている女性にも、相手を死なせて解放される方法を教えているという。 「最悪から人は再生する。虐待される事に依存している者もいるけどね……」  中村は。とある会社の社長と寝て、倒産するという未来を見た。倒産の原因は、原材料の不正で、大問題になると告げた。しかし、その社長は隠す方法ばかりを徹底したが、内部告発にあって倒産した。 「未来を知っていても変える事が出来ない場合もある」  他には一人娘が事故死すると知り、その原因となる旅行にいかせなかったというものもあった。娘は事故死を免れたが、その事情は信じず、挙句、中村と寝た事を浮気だと決めつけられて、家族は崩壊した。 「危険を回避しても、不幸は同じという場合もある」  未来を知る事で、避けられない不幸と対峙し続け、心が病んでくるという。 「……そうか、死保は中村さんの心が病んでゆくのを止めたいのか」  中村は心を病み、更なる不幸を引き込んでくる。死保は何かを知っていて、中村が造る不幸を止めなくてはいけないのだ。 「新悟、中村さんのフォローを死保にお願いしておいてね。それと、一ノ瀬さんはここに残りでもいいでしょう。死保の説明をお願いします」  俺は、絶対にここに残りたくはない。 「市来、帰る気だろう。もう少し、ここに居ろ。お酌しろ」  中村が酒瓶を振っているので、仕方なく酌をすると、胸や尻を触られていた。 「セクハラですね……」 「かわいい子は口説くの!もう、生きているのが不思議なくらいに、可愛い!!!!ふて腐る表情も、怒った顔も、可愛い!!」
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