第十七章 夜は静かに嘘をつく 二

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「心の欠損も、身体の欠損も、見えるか見えないかの違いしかないよ……こいつは、久住か?良かったよ。犯罪者になる前に、この男に救われた……」  中村は、未来は見えなくても、元々の洞察力の良さで、普通の占い師もしていた。動作や言葉の選び方、会話で相手を分類しているらしい。 「この動画……会話も、動作もありませんが……」  動作はあっても、ピストン運動をしていて、とても見ていられない。声はあるが、会話ではなく喘ぎしかなかった。寒河江も、実況は分かったが、少し時間を選んで欲しい。 「こういう時の方が、相手を読み易いのさ。無防備だからね……これは、付き合って浅いカップルで、互いの動作が読めていない。緊張感があるけど、その中に信頼も生まれている」  木積は、久住に愛情を持っていて、激しい行為の中に優しさも感じるらしい。 「久住は割とクズだろうけど、木積?か、こいつはいい男だ。姿は毛の塊で、まるでゴリラで見られないが、心は熱くてまっすぐだ」  中村は、木積を褒めているが、毛が多すぎるとコメントしていた。木積は裸なのであろうが、背中から尻、足まで剛毛に覆われていて、夜に見たら、人間なのか疑いたくなる。顔以外に毛が多く生えているので、裸という感じも全くない。まるで着ぐるみか、毛皮を着ているようだった。
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