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中村の所に一ノ瀬を残すと、俺は新悟と松下の家に向かう事にした。
「一ノ瀬さんを残してもいいものですか?」
「死保との手続きをお願いしてきた。それに、中村さんを理解してサポートできるのは、一ノ瀬さんしかいないよ……俺には無理」
俺には中村の人生を包み込むような、包容力がない。それに、中村は俺に息子の姿を見ていて、決して頼らないだろう。
「松下さんの所に今日は泊まって、明日、桜本さんの所に行こう」
「まあ、後は久住さんですからね……」
久住は慎重になっているので、ゆっくりと死保に誘うしかないだろう。
途中で市場があったので、エビなどを買い込むと、松下の家に帰った。差し入れに料理を持ってゆきたいので、あれこれレシピを考えていると、新悟も食べたい物を言ってくる。
「春巻きと、小籠包と餃子が食べたいですね」
「夜は水餃子にするか……」
海老が透けるように作ってみよう。
「でも……松下さん、俺がいると邪魔ではないですかね」
「大丈夫でしょう……人数が多い方が料理は美味しいしね」
松下は家族のような雰囲気もあって、一緒にいると和んでくる。いつもピンと張りつめているような新悟にも、帰る家を持って欲しいと願う。
「俺の帰る所は、場所ではなくて兄さんですからね」
「だから……俺を読むな」
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