第十八章 夜は静かに嘘をつく 三

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「その時は迎えに来ますので、呼んでください」  食事をしているのだが、寒河江から資料が送られてきたので、つい見てしまった。 「兄さん、食事中ですよ」 「……うん、まだ久住さんと連絡が取れないらしいよ」  それは、まだ寝ているということだ。こんなに、長く続けられるものなのか、不思議に思ってしまう。  春巻きでも、エビ版を作ってみた。これはこれで美味しいが、やはり普通の春巻きの方が美味しい。一人で食べ比べていると、松下が隠れて資料を読んでいた。 「古墳で、女性が祀られているということがあるの?」  あまり聞いた事が無いが、存在するのであろうか。 「ピラミッドも王のもので、女性は妻でしょう。同じようなものではないのですか?」 「女性の古墳もありますよ。まあ、確かに夫婦で並んでいますけどね」  新悟が怒りながら、俺の携帯電話を取り上げたが、松下の携帯電話までは取り上げる事が出来なかった。 「食事に集中!」 「はい!」  返事はしたものの、俺の言った古墳の位置が合っていたのか、結果も気になる。 「今回の古墳は、他と異なる事があってね。文献に記載されていなかったけど、かなり巨大な古墳であったという事だよ」  巨大であったので、皆は山だと思っていたらしい。そこで、開発されてしまい、位置が分からなくなっていた。 「古墳は大きいほど、力の大きな権力者となる。日本最大級でありながら、どうして歴史上から消えているのかが、気になるよね」  それは簡単な理由で、地図を見ると、ここには元々、山があったのだ。その山を加工して古墳にしたので、周囲の人は山だと思い、権力とは関係なく巨大であったのだ。 「古墳を作るには知識が必要でしょう。きっと……だから王は、土木の基礎知識を伝える為に、古墳を作らせ、その方法を分散させた」  古墳は、墓という名目の、土木知識の研鑽の場であった。 「そういう解釈もいいよね……想像は自由で、真実かもしれない」  水餃子で古墳を語ると、新悟に怒られてしまった。 「兄さん。俺も、合流しますから。もう、押し倒されたり、襲われたりしないでくださいね」  俺も、好きで押し倒されているわけではないが、素直に頭を下げておいた。 「あとは、久住さんか……」 「私からも連絡してみるよ。木積さんの仕事のスケジュールを聞いてみようね」
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