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木積が仕事をしていれば、久住が自由になるだろう。程々の関係にしておかないと、二人共、社会人として失格になってしまう。
食事が終わると、松下は風呂のスイッチを入れていた。
「新悟、風呂に入ってしまってよ。俺も片付けが終わったら入るからさ。そうしたら、ミーティングルームで、久住さんの対策を考えるか……」
久住をスカウトできなければ、メンバーが消滅してしまうのだろうか。でも、無理という場合もあるだろう。
「じゃ、先に入ります」
新悟の着替えを考えていなかったので、俺は慌てて、使っていない下着を揃えた。すると、新悟はサイズを確認して、松下にお願いしていた。
「兄さんのでは、小さいです」
「失礼だな……でも、死保から出る度に購入しなくてはいけないから、不便だよね……」
俺は、衣服まで松下が購入していて、死保に戻っても消えるということはない。でも、松下に金を渡せないので困っている。せめて、食事代金は俺が出そうと思っているのだが、松下の出費の比ではない。
新悟が風呂に入ると、キッチンに松下がやってきて、俺を後ろから抱き締めていた。
「……ただいまのキスがまだだったからね」
松下がキスしてくると、服に手を入れてきた。松下の手が冷たくて、飛び上がりそうになりながら、服から取り出そうと必死になる。
そのままジタバタしていると、松下が押さえながらも笑っていた。
「この必死な姿が、ハムスターと言われれば、そんな感じだね……」
ハムスターとは、どこで知ったのだろう。寒河江しかいないかと、携帯電話を睨んでみたが、松下はもう一度キスしてきた。
「……嘘でもいいから、私だけのものだと言って欲しい……」
そこで、上手に嘘がつけたらいいのに、見つめられると目を逸らしてしまう。すると、松下が悲しそうに見ていた。
松下に悲しそうな顔をさせると、俺の心が痛くなる。俺は、松下の首に手を回し、自分から唇を押し当てる。すると、松下も背に手を回して、きつく抱き込んできた。
「嘘なんて、松下さんの前ではつきません……大好き……愛というのは、俺には分からなくて……どう言ったらいいのか分かりませんが、失いたくない……」
松下は、俺の頭を撫ぜて、頬を寄せていた。
「……困らせてゴメン。愛しているよ、市来君……」
暫し抱き合っていると、風呂場で物音がしたので、そっと離れる。
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