第十九章 夜は静かに嘘をつく 四

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 俺が記憶を辿ってゆくと、新悟が少しフォローしてくれた。 「兄さんは、人類を滅亡させようとしたのではなく、死んだら、もれなく全員が成仏するように、芋蔓式?のようなシステムを構築したのですよ」  人の魂を繋げてゆき、堕ちてゆく者を引っ張り上げるようなものらしい。 「その、全救済に異議を唱える者がいたということです」  世界が急激に変わろうとしていて、殺す側も、守る側も方法を選べない状況に陥ったらしい。 「……兄さんのいた建物には、いねむり運転をしたタンクローリーが荷物を積載したまま突っ込み、周囲を巻き込んで爆発しました」 「え?俺の会社は無いの?」  引っ越しをして建て直しをしているようだが、元の場所には無いらしい。 「ガスのローリーであったので、隣のビルも吹っ飛びましたよ……」  相当な事故であったらしい。そこで、俺と新悟は行方不明になっている。 「重体とかではないの?」 「そうですね……そう思って探しているのですが、見つからないのですよ」  もしかすると、魂は死保が奪い、肉体は殺す側が確保した可能性があるという。 「現世では、生きていたとすると、状況からして瀕死の重体でしょう。それに明海もそう言っていたでしょう?でも、見つけられない」
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