第十九章 夜は静かに嘘をつく 四

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 死保でも探しているのだが、見つけていないらしい。だから死保は、俺と肉体がばったり会ってしまい、どちらかが消滅するのを恐れ早く戻って来いと指示するらしい。 「……そういう事なのか……」  俺は、自分の手を見て考えてしまった。新悟は、重体だろう俺を助ける為に、人工のあれこれを作っていた。 「うん……だから、成仏システム稼働前の魂を救っているのか?」  でも、最近死んだ人でも、彷徨っている場合がある。システムが不完全だったのか、確認してみたい。 「寒河江、聞いていたでしょ。成仏システムって完全稼働しているの?」 『妨害があって、完全稼働ではありません』  殺す側が、俺の身体を持っているとして、生かしている意味はない。ならば、俺は死んでいるのではないのか。 「俺、殺されているのではないの?」 「それが、そうもいかないようで……システムを止められるのも、兄さんしかいないのですよ……」  妨害は出来ても、完全に止める事が出来るのは俺らしい。 「まあ、向こうの組織?も、解釈には色々あって、内部分裂しているようですけどね……」  俺も、無意識でとんでもないことをしでかし、新悟まで巻き込んできまったらしい。 「ごめんな……新悟、巻き込んでしまって……」 「いいえ。俺のほうこそ謝らなくてはいけないのですよ。俺は、兄さんを守るために、一緒にいたのに、目を離してしまった……」  新悟は、俺を守る為に生まれてきたのだと、死保に来て理解したという。 「兄さんに出合って、兄さんを守れて……俺は、これ以上にない充実感と幸せを貰いました……もっと、兄さんと一緒にいたい」  俺の秘密が分かってきても、今の状況がすぐに変わるということもない。俺達は、死保で仕事をしなくてはいけないのだろう。 「うん……では、仕事をしようか」 「兄さん、重大な事なのに、切り替えが早いですね」  考えていても、解答は出て来ない感じがするので、まず古墳を解決しよう。 「古墳は作成に資金やら労力をかけ過ぎ始め、突然、終了しました」  古墳を作る事を禁止したのだ。 「まあ、妥当だよね」  死保が追っているのは、古墳に埋葬されている者の知識であった。埋葬されている人は、成仏している可能性が高いので、残っている知識を読み取って貰うしかない。 「久住さんは、人以外の記憶も読めるのかな?」 「人も物も、似たようなものでしょ」
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