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「死保というのは……記憶を消す事が出来るでしょう。でも、完全に消せるわけではない。誰かが、記憶を戻して、死保の情報を集めているのです……」
俺と関わった人間や、記憶を消した人の情報などが取引されているらしい。
「それは、死保を見張ればいいので、スパイかは分かりませんよ」
松下は俺と住んでいたりするので、記憶を蘇らせた人からの問い合わせなどを受けているらしい。そこで、松下も何が起こっているのか調べていた。
「まあ、相葉君と西片さんが、飲みに来いと言っていましたけどね」
飲みに行くのはいいが、又、記憶を消さなくてはいけなくなるのではないのか。
「市来君、心配するのもいけませんか。凄く、
怒っているように見えますけど……」
「仲間を疑いたくないだけです」
松下がこのまま眠るというので、俺もそのまま寝転がった。死保のメンバーは、仕事が達成できなければ、一緒に消滅してしまうという連帯責任を課せられている。でも、それ以上に、家族のような存在であった。
家族に、裏切り者がいるとは考えたくないだろう。
松下の手がそっと伸びてくると、俺の頬に触れていた。そして、がっしりと固定すると、キスをしてくる。俺は、おやすみのキスにしては長すぎると、松下を蹴飛ばしてしまった。
「市来君、暴力は反対ですよ」
「……松下さん、俺の許可を取ってから、キスしてください」
蹴飛ばされた松下は、又、這い上がって来ると、俺を抱き込んでいた。
「……許可してください」
「不可です」
それに、俺はもう眠い。半分、眠っていると、松下が溜息をついて諦めた。
「まあ、自分から一緒に眠るだけでも、大きな一歩です」
松下は、俺の頭にキスをすると目を閉じていた。俺は、安心したのか、すぐに爆睡してしまった。
翌日、目が覚めると、松下の胸を枕にして眠っていた。どうも俺は、この暖かさと固さが、枕に丁度いいらしい。でも、高さが合わなかったのか、枕を腹に敷いて調節していた。眠りながらやった事なので許して欲しいが、松下が苦しそうに眠っていた。
俺は起き上がるとキッチンに行き、朝食のメニューを考えてしまった。昨日は、差し入れもあるので、肉饅頭を造ろうと思っていたが、どうも気分がのらない。
「兄さん。花巻蒸しパンと、油淋鶏にしておきましょうか……それと、餃子でいいでしょう」
新悟も起きてきて、料理を始めていた。
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