第十九章 夜は静かに嘘をつく 四

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 中村は、俺の未来は見えないと言っていた。だから、俺が寝ても関係ないだろう。でも、死保のメンバーの未来も見えないと言っていたので、新悟に言ったのは、本当に嫌味であった。  ラジオを付けると、事故情報が流れていたので、中村の予知は当たっていたらしい。事故を避け、高速道路から降りてきた車で、一般道路も混んできたので、俺は更に抜け道に入っておいた。 「兄さん、道には強いですよね……」  山道を抜けて、再び国道に抜けると、混雑を通過したので再び高速道路に入った。このまま順調にいけば、三十分もすれば桜本と合流できるだろう。  付近の景色を確認すると、高速道路を降り、一般道に入った。  ここには山が少なく、遠くに山があるだけであった。気候も穏やかなので、住みやすい場所であっただろう。  でも、その中に、小山がありこれが古墳であった。この古墳は、元々、ここにあった山を加工して作られたものだ。 「山は元々、信仰の対象だった……それを加工しようとしたので、反対派もあった……」  殉死とされたのは、この反対派であったとも考えられる。  桜本は、旅館を借りているというので、合流のために旅館を訪ねてみた。桜本の名目は、土地の測量となっている。桜本達は作業服になっているというので、俺はスーツにしてみよう。俺は、作業服を持っていない。 「桜本さんを訪ねるから、俺は着替えるよ」  着替えの場所がないので、車を公園の駐車場に止めて、車の中で着替えておいた。 「仕事関係者ということでいく」  新悟の分のスーツは持っていなかったので、車で待っていて貰おう。 「兄さんのスーツ姿、見慣れていたけど、改めて見ると、かっこいいですね」 「そうか?まあ、このスーツ、松下さんの見立てだしな」  俺がいつも着ているスーツよりも、数倍高い感じがする。  スーツを着て運転席に戻ると、靴を履き替えるのを忘れていたので、外で履き替えておいた。 「こうして見ると、兄さん、ちゃんと社会人だったのですよね」 「そうだよ。ちゃんと会社員をしていたよ」  運転席に戻ると、車を走らせた。  平地で気候が穏やかで、水も豊富にあった。そんな豊かな土地で、権力者が墓を作る。 「権力者でも畑に出来る土地に墓を作ろうとはしなかった。だから、信仰の対象であっても、無駄な山を加工しようと提案した」
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