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「ああ、ごめんね。でも繋いだままにしたからすぐわかったでしょ」
「リウさんが感覚で動くのはいつものことですけれど、あんまりミユさんを困らせちゃ駄目ですよ。でもよくコウヤさんが危ないってわかりましたね」
「だってトーヤの代わりにあの家の守りを補強したの僕だもの。自分の関与したものを害されたらそりゃわかるよ」
驚いてリウを見ると、彼は慌てた。
「人には向き不向きってあるだろう? トーヤにはトーヤの得意なものがあって、僕はまあツァウベルを使うことくらいしか得意なことがないだけで、君のお兄さんの名誉を傷付けるつもりはないよ」
わたしの様子を窺うように上目遣いで見られても、そこまで考えてはいなかった。そもそもここに来てから聞いている話を振り返ると、魔法使いと魔術師と、もしかしたら魔女についても、何か違いがあるように聞こえる。男だから魔法使いとか、女だから魔女だとか、そういうことではないのか。
「……ありがとう。あの、聞いてもいい?」
「はい、なんなりと!」
ずっと手を取られたままだったのを強く握られた。もう離してもいいと思うのだけれど、それを彼女を目の前にしてなんだか言いづらいのだ。
「あなたたちには当たり前のことなのかもしれないんだけれど、その、」
声が縮こまりそうだ。
「魔法使いと、魔女と、魔術師って……話を聞いているとそれぞれ違うように聞こえるのだけど、どう違うの……?」
チェルニーは何か言おうとして口を開きかけ、助けを求めるようにリウを見た。リウはあーとかそっかーとか呟いている。何がどうとは言えないけれど、言ってしまった自分も段々恥ずかしくなってくる。彼等にとっては至極当然のことかもしれないけれど、わたしにとって魔法使いは兄さんで、魔女は自分のことであって、自分たち兄妹以外がどうであるかなんて知らなかったのだ。兄さんもそこまでは教えてくれなかった。わたしが彼がいなくなる前に聞いていたのは、自分たちが魔法を使えること、リーヴェル・ランヴァルという人物のこと、世界が自分が知る以外にもたくさんあること、そしてツァウベルを使うための心得と……具体的ではないが、兄さんは悪いものが世界に影響を与えないように調整する仕事をしていること。彼はこれらがわたしの人生の役に立たないのが一番だと言った。
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