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フォークを持ったところで手が止まってしまったため、目敏く気付いたリウが何か言おうとした。
「たとえば今私たちといて、君はこの場に性質の違うものを肌で感じているだろうか」
リウの動作を遮るように、ミユが先に口を開いた。
「性質が、違うもの」
どうだろう、とミユは首を傾ける。
魔法とは縁のない集団にいる中での、なんとなく自分と合わなさそうだなとか、惹かれるものがあるなとか、そういうのとは違うのだろう。
自分と兄の間では特段感じなかったけれど、ここにいる自分以外の三人に対して感じるもの。
「透明な……感じ……?」
言い表すのが難しくて、そんな言葉しか出てこない。リウがツァウベルを使う時に手に持っていた石の事を思い出して、あの石や水を連想するような透明な空気を纏っているイメージに近かった。思った事をそのまま伝える。
「では君や燈夜は?」
「……湿った土の匂いが満ちている場所のような、草花の匂いも混じる空間のようなイメージ」
こちらは家の庭を思い出していた。雨が降ったあと、庭に咲く花や木々に雫がとどまり、草花の匂いと土の匂いが混ざり合った場所が生まれる時に感じる、生まれたものの息吹に包まれているような感じだ。
「それぞれの性質の感じ方って、はっきりした答えはあるの?」
「ない」
ミユは一口水を飲んで続ける。
「ただ自分と相手が異なる性質であるということを認識できれば問題ない。魔女であろうと魔術師であろうと、そして魔法使いであろうと、全て私たちにとっては個性の一つだ。大昔は優劣を付けていたというが、たとえば魔女だからといって皆均一の力を持つわけではない」
「ちなみに僕は魔術師が空で、魔女が森で、魔法使いは朝陽って答えた」
リウが口の中のものを飲み込んでから喋りだす。
「みんな小さい頃に聞かれますものね」
「チェルニーちゃんはなんて答えたの?」
「えっと……魔術師がつやつやで、魔女がふんわりして、魔法使いがつるんとした感じですね」
「つやつやとつるんは違うの……?」
「違いますよ」
ね? とチェルニーがミユに視線を送るので彼は一瞬黙ると、
「鞣した革がつやつや、インクの壜がつるんだ」
「適当じゃない?」
「チェルニーは何がとは断定していない」
「そうなんです。なんでも感覚は同じじゃないというお話なのに、なぜか基準になるものを求められるから不思議で不思議で」
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