Ⅰ 魔女と魔術師

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「ああ……一口につやつやって言っても、人それぞれ対象にしてるもの違うもんね……」  話が違う方へ流れて行く。チェルニーが思い出したように口を開く。 「そうだ、広夜さんから魔女と魔術師の違いは聞きましたけれど、魔法使いにはお会いになったことがないんですね」  え、と驚きが漏れた。 「兄さん……が、魔法使いなんじゃ、」  と、そこまで口にしてはたと気づいた。  ついさっき、ミユにわたしと兄の性質について聞かれて、自分は何を考えたのだったか。自分と兄を別々の感覚で捉えることなく、同じ性質のものとして語らなかったか。 「もしかして……燈夜兄さん、魔女なの?」  そして性質の同じ、わたしも魔女なのだと。 「燈夜も魔女だ。性別は関係ない」 「でも、」 「君には自分が魔法使いだと語ったのなら、それは君への気遣いだろう。君が元々住む世界がある考え方を持つなら、私たちにもまた別の考え方があるんだ。君の置かれた場所での理解ができるように、言い方を変えてもおかしくはない」  確かに、自分と兄の二人だけしか判断材料がない状態で、魔女と言われるものは女性でしか知らないわたしに自分が魔女だと告げるのは、何かしら誤解が生まれて話がすんなり受け入れづらかったかもしれない。今の段階で既に飲み込むのが厄介な印象を持っている。 「話を進めても大丈夫だろうか?」  ミユが確認してきたので、わたしは黙って頷いた。 「性質が違うことが認識できたら、次はどうしてそのような違いが生まれるのかという点について話そう。これは先程チェルニーが言ったように、ツァウベルの性質によるところが大きいとされる」 「これがまた一部の魔女にしか詳しいことはわからないんだよね」  「そう。私たちはツァウベルに好かれる素質のある者として生まれ、自分を好いているツァウベルの集う度合いによって力の大きさが決まり、性質によって自分が何者であるか決まるんだ」  生まれたばかりの赤ん坊に、ふわふわと綿のようなものが纏わりつく様子を想像しながら、綿が多いと力が大きい、綿の色が違うと性質が変わる、と考えてみた。同時にツァウベルとはなんなのか、と思わずにはおれない。
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