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部屋の窓は全て閉ざされて、光が入らないよう――外から見えないように、重たいカーテンが引かれている。小さい頃入った時には明かりがあったと記憶していたけれど、他の部屋と同じように壁にスイッチがあるわけでもなく、燭台や懐中電灯も今は持っていない。
「兄さん、」
「ちょっと待って」
兄がパチンと指を鳴らすと、途端に天井に吊るされたシャンデリアに灯りが点った。蝋燭もないそこに、丸く発光するものがゆらゆら揺れながら止まっている。
わたしは指が鳴らせないので、果たしてどうやって魔法を使うのだろうかと不安になった。……たぶん格好をつけただけなんだろうけど。
「さあこっちに来て。ランヴァルの杖、昔見たのは覚えてる?」
リーヴェル・ランヴァルが使っていたという、今はもう使う人のいない杖だ。壁に取り付けられた金具に掛けてあるそれは、わたしの背より頭一つ分は大きくて、先の部分に透明な水晶のような石が付いている。
「これ実は大鎌なんだけど、扱えたのはリーヴェルと……確かひいおじい様だけで」
「魔法を使うのに大鎌なんているの……?」
「何せリーヴェルはすごい魔女だったから」
説明になっていない。
僕が使えたら良かったんだけど、と呟いたのが聞こえた気がした。
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