Ⅰ 魔女と魔術師

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「広夜ちゃん、大丈夫だった?」  駆け寄ってきた秋月さんの心配に、わたしは頷いて答えた。まだ心臓がばくばくと鳴っているものの、取り乱してはいなかった。自分以外の人間がそばにいたのが良かったのかもしれない。 「秋月さんは……?」 「わたしは平気。慣れてるもの。部屋を散らかしちゃってごめんなさい」 「いえ……片付けるだけですから」  それより、 「リウ、放してくれる?」  さっきからずっと抱き締められたままだ。 「ああ、ごめんね。足元気を付けて」  そっと腕を解いて解放される。息がしやすくなった。 「それにしても驚いた。あれ、よくこっちに入り込んだね」  リウが肩に着いた木屑を払う。まさかと思って天井を見ると、一か所大きく引っ掻いたような疵が増えていた。 「何言ってるの? サリタがこっちに現れたってことは、どこかに空間の綻びがあるってことでしょう」  ん? とリウは不可解なものに直面したような顔をしたが、すぐにそれも真面目な顔になる。 「わかった? 今までサリタはこの世界に現れたことがないの。ということは、こっちのどこかに不具合が生まれてしまったってこと。で、今まで守ってきたのが誰かって言うと――」  秋月さんと目が合う。 「ここを守ってきたのはランヴァルの家。というかほぼリーヴェル・ランヴァル一人の力で支えられてたのよ。だけどもうリーヴェルはいない。そして燈夜も行方不明。だからね」  彼女は困ったような顔をして、 「あなたにどうにかしてもらわないといけないのよ、広夜ちゃん」
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