3人が本棚に入れています
本棚に追加
/109ページ
「広夜ちゃん、大丈夫だった?」
駆け寄ってきた秋月さんの心配に、わたしは頷いて答えた。まだ心臓がばくばくと鳴っているものの、取り乱してはいなかった。自分以外の人間がそばにいたのが良かったのかもしれない。
「秋月さんは……?」
「わたしは平気。慣れてるもの。部屋を散らかしちゃってごめんなさい」
「いえ……片付けるだけですから」
それより、
「リウ、放してくれる?」
さっきからずっと抱き締められたままだ。
「ああ、ごめんね。足元気を付けて」
そっと腕を解いて解放される。息がしやすくなった。
「それにしても驚いた。あれ、よくこっちに入り込んだね」
リウが肩に着いた木屑を払う。まさかと思って天井を見ると、一か所大きく引っ掻いたような疵が増えていた。
「何言ってるの? サリタがこっちに現れたってことは、どこかに空間の綻びがあるってことでしょう」
ん? とリウは不可解なものに直面したような顔をしたが、すぐにそれも真面目な顔になる。
「わかった? 今までサリタはこの世界に現れたことがないの。ということは、こっちのどこかに不具合が生まれてしまったってこと。で、今まで守ってきたのが誰かって言うと――」
秋月さんと目が合う。
「ここを守ってきたのはランヴァルの家。というかほぼリーヴェル・ランヴァル一人の力で支えられてたのよ。だけどもうリーヴェルはいない。そして燈夜も行方不明。だからね」
彼女は困ったような顔をして、
「あなたにどうにかしてもらわないといけないのよ、広夜ちゃん」
最初のコメントを投稿しよう!