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「母様と、それにエリットが、父様や他のみんなを説得してくれたのよ。だからね、近々わたしは家を出て別の世界で暮らすことになるから」
彼女の家族はリーヴェルに甘かった。というか、自身の能力を存分に発揮し、次から次へと興味の対象を見出して活き活きする彼女を次第に誰も止められなくなり、元気であればそれでよしとしていた。兄弟も多かったので跡継ぎのことを心配することもない。エリットとの婚約もたまたまリーヴェルの兄とエリットが親しかった流れでなんとなく生まれて噂がそれを強固なものとし、家も釣り合うし本人同士も特別嫌な相手ではなかったのでじゃあ婚約するかとなっただけだった。
「……そいつと結婚……するのか」
「そう。あちらの方法で式はひっそりと。たまに帰るし空間の調査も続けるからその点は大丈夫。彼も理解してくれてるから」
彼、とリーヴェルが口にしたのが、シェオに一番突き刺さった。
「ツァウベルが使える奴なのか?」
「いいえ。ツァウベルは使えないけれど、とっても素敵な人よ」
いったいどんな奴なのか。ツァウベルのことにばかり興味を持って、それに伴う己の可能性を広げることが趣味のようなリーヴェルが、ただの人間に惹かれるなんて。
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