過去*

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 すると急激に光り出して視認できるようになり、ツァウベルが次々に集まってきた。すぐに手が光に覆われて、内側に侵食するような心地がする。実際どうなっているのかはわからない。 「不快ねえ」  幾分のんびりとそう言って、 「わたしは宿り木ではないわ」  そう囁いて吹き消した。手には何も残っていない。  リーヴェルはまじまじと自分の手の裏表を見て、異変がないか確かめた。傷もなければ何かが染みたような跡もない。極めて美しい手。彼女は自分の手を褒めてくれた人のことを思い出して、自然と口元が緩む。 「あなた馬鹿なの?」  よもや一日の内に二度も馬鹿呼ばわりされるとは思っていなかった。しかもその一度は知らない声に。幸せな思い出をいったん引っ込めて、ようやく彼女は声の主を探すことにした。 「どなた?」  自分一人がいる空間で、どこに向けたら良いのかわからない問いを投げる。 「姿が見えないのは魔法? でもそれらしい感じがしないの。隠れているのかしら」  その問いに答える声はなく、辺りは静まり返る。もう一度おーいと呼び掛けてみたが、彼女に返事をするものは出てこない。  おそらくこの空間に住まう者だろうとは思う。自分が異質なものに近づこうとするのを止めようと気遣うくらいだから、それ程悪いものではなさそうな気がする。リーヴェルは前向きに考えて、それからはたと気づいた。シェオは先程のツァウベルに呑まれたりしないのだろうか――そもそも気づいていたらここに定着しようとは思わないのではないか? 「ねえ、わたしはあなたと話がしてみたくなったわ。気が向いたらまた声を掛けてくれるかしら?」  次はちゃんと最初から返事をするから、と。  そう言って立ち去ろうとしたとき、ふっと頬を撫でる風が吹いた。思わず右手で触れると、そこに重なる手の感覚があった。 「あら積極的ね」  リーヴェルは微笑むと、逃がさないようにほっそりとした手首らしい部分を逆の手で掴んだ。杖は邪魔なのでとっくに仕舞い込んだ。 「あなたって強引」 「そう? 探し物が下手なのよ。だから見つけたときにしっかり捕まえておかなくちゃって思っているの」
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