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矢継ぎ早に問いを投げ掛けて、リーヴェルは影を狼狽えさせる。口をぱくぱくさせて戸惑う影を、リーヴェルはしっかりと見つめる。どう探ってみてもツァウベルの気配はないが、先程のツァウベルのようなものによく似た感じがした。そもそも先程のものがツァウベルなのかはっきりしないのだが、普段魔法を使うための源によく似た性質を持っている感覚はあった。あれはなんなのだろう。
「わたしは、わたしは……ツァウベルって?」
ようやく影は声を発する。
「幽霊? は、わからない」
幽霊ではなさそう。
「わたしは、死んでしまったはずなの」
……それなら幽霊なのでは、と、
「ナハトマールの裏側を、」
影が白だけでなく、一瞬淡く色付いた。淡い緑のような、水色にも見えるような色合いの目と、リーヴェルの翡翠の目が合ったような気がした。
「あなたはそれを知っているの?」
ナハトマールの裏っかわ。
「わたしは」
あなたは、
「サリタ」
嘘に恵まれた子。
それは昔々の言い伝えだった。
「あ、」
気づくとリーヴェルの内側から、何か吸い上げられるような感覚があった。自身のツァウベルが失われる、とはっきりわかった途端、反射的にサリタの手首を離しそうになった。緩んだ力にすかさず身を離そうとしたサリタを、リーヴェルはまたすぐに捕まえる。
「離して」
「駄目」
「なんなのあなた」
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