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「え、あ、わたしですか? えっと、チョコレートが好きです。苦いのが」
「苦いチョコレートね」
それもちゃんと用意しよう。
「もしかしてわたしにもって考えてくれたんですか……?」
「だって、ミユだけじゃなくてチェルニーにもお世話になっているし」
「とんでもないです。でも、ありがとうございます」
そう言ってはにかむ姿が実に愛らしかった。他愛無い会話をしているこの時間がとても穏やかに感じられて、そう思った途端にすぐ暗雲が顔を出す。何も心配も不安もない時間が欲しいと切に思う。
一瞬ぼうっとしてしまったのか、止まった手を見逃さずこちらの様子を窺っていたリウと目が合った。彼は人のちょっとした動作にすぐ気づくのだなと感心しつつも、わずかに鬱陶しくも感じる。
「そういえば、ミユは?」
特別親しいわけでもないので積極的に口を出して良いのか迷いながらも、二人ともミユについて何も言わないのが不思議だった。なんとなくだが、昼食に呼ばれてテーブルに着いてすぐ、あれ? と思ったその心の内を察して、この家の中心にいるのだろう彼の所在を一言は教えるような人たちだと思っていた。
隣でチェルニーが緊張したように固まる。
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