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「ミユはちょっとね……たぶん手こずってるんだと思う。朝の用事に」
「手こずる……? 何か大変なことがあったの?」
リウは一度天井を仰いで、それからグラスに残っていた水を一息に飲んで大きく息を吐いた。そんなに大層なことなのだろうか。
「落ち着いて聞いてほしいんだけど」
「ミユさん、」
いいから、と椅子から立ち上がりかけたチェルニーを制して、リウはきちんとわたしと目を合わせ、
「トーヤがね、見つかったんだ」
噛んで含めるように、そして簡潔に彼は告げた。
燈夜が……兄が、
「なん、で、」
兄さんが、と。
告げられた言葉に理解が追い付くと、わあっと頭に血が上る。
「なんで、それを、」
先に言ってくれないの?
そう言葉を続けたいのに、声が上手く出てこない。暢気に食事をしている場合だった? わたしが疲れていたから? それとも何かもっと、言いにくいことが、
「落ち着いて。多少怪我はあるみたいだけれど、大丈夫だから」
何が大丈夫だというんだろうか? 怒りで頭が真っ白になりそうだ。座っていられない、と取り乱して立ち上がる。上手く椅子が下がらず倒れて、大きな音が響いた。
「広夜さん、ごめんなさい。お願いですから落ち着いてください」
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