Ⅲ 魔女の夢と図書館の竜

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「ミユはちょっとね……たぶん手こずってるんだと思う。朝の用事に」 「手こずる……? 何か大変なことがあったの?」  リウは一度天井を仰いで、それからグラスに残っていた水を一息に飲んで大きく息を吐いた。そんなに大層なことなのだろうか。 「落ち着いて聞いてほしいんだけど」 「ミユさん、」  いいから、と椅子から立ち上がりかけたチェルニーを制して、リウはきちんとわたしと目を合わせ、 「トーヤがね、見つかったんだ」  噛んで含めるように、そして簡潔に彼は告げた。  燈夜が……兄が、 「なん、で、」  兄さんが、と。  告げられた言葉に理解が追い付くと、わあっと頭に血が上る。 「なんで、それを、」  先に言ってくれないの?  そう言葉を続けたいのに、声が上手く出てこない。暢気に食事をしている場合だった? わたしが疲れていたから? それとも何かもっと、言いにくいことが、 「落ち着いて。多少怪我はあるみたいだけれど、大丈夫だから」  何が大丈夫だというんだろうか? 怒りで頭が真っ白になりそうだ。座っていられない、と取り乱して立ち上がる。上手く椅子が下がらず倒れて、大きな音が響いた。 「広夜さん、ごめんなさい。お願いですから落ち着いてください」
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