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「ごめんなさい、また来るわ。ブルクの人間はどうも苦手みたいなの」
そう言って瞬きの間に彼女は消えた。なんの音もしなかった。理解が追い付かなくて呆然としていると、また新たな声がする。
「リウ、勝手なことをするなと言っていただろう」
すっかり暗くなった玄関ホールに灯りが点る。廊下の脇のスイッチを入れる音はしなかった。
「あー……ミユも来たから警戒されちゃったのかなー」
「なんだと?」
続いて廊下も明るくなって、近づいてきた人物も含めて姿が照らし出された。
「せっかくサリタと話ができると思ってたのにさ」
「またそれか……無駄だと言っただろう。あれには無理だ」
「でもランヴァルの人間がいたらちょっとは違ったよ。今まで無視しかされてなかったじゃん。ね、コーヤ(、、、)ちゃん(、、、)」
背を向けていた彼が振り向き、彼等の顔が瓜二つであるのが明らかになる。艶やかな黒髪に紫の双眸。同じ顔で、それぞれ違った雰囲気を持っていて。
それよりも。
「……どうしてわたしの名前を知っているの」
いきなり全部飲み込むなんて無理なのだ。
「なんなのあなたたちは」
どうして兄のことを知っているのか。わたしのことを知っているのか。あの少女はなんなのか。何もわからないまま押し寄せて来て、怒りが今にも爆発しそうだった。なんだか泣きそうにもなってくる。いい加減にしてと叫びたかった。
こちらがどう思っているのかわからない彼等の片方が、笑みを浮かべて話し出す。
「僕等はね、トーヤと同じ組織の魔術師なんだよ。トーヤに聞いたかな、名前のない組織。誰か適当に付けちゃえばいいのに」
ね、と同意を求めて同じ顔のもう一人の肩に腕を回す。身を寄せられた方はそれに動じず、落ち着いた様子で口を開いた。
「私がミユ・ブルクで、こいつが弟のリウ・ブルク。名乗るのが遅くなって申し訳ない。君のことは燈夜に話を聞いていて知っていたんだ。リウ、」
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