Ⅰ 魔女と魔術師

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「ごめんなさい、また来るわ。ブルクの人間はどうも苦手みたいなの」  そう言って瞬きの間に彼女は消えた。なんの音もしなかった。理解が追い付かなくて呆然としていると、また新たな声がする。 「リウ、勝手なことをするなと言っていただろう」  すっかり暗くなった玄関ホールに灯りが点る。廊下の脇のスイッチを入れる音はしなかった。 「あー……ミユも来たから警戒されちゃったのかなー」 「なんだと?」  続いて廊下も明るくなって、近づいてきた人物も含めて姿が照らし出された。 「せっかくサリタと話ができると思ってたのにさ」 「またそれか……無駄だと言っただろう。あれには無理だ」 「でもランヴァルの人間がいたらちょっとは違ったよ。今まで無視しかされてなかったじゃん。ね、コーヤ(、、、)ちゃん(、、、)」  背を向けていた彼が振り向き、彼等の顔が瓜二つであるのが明らかになる。艶やかな黒髪に紫の双眸。同じ顔で、それぞれ違った雰囲気を持っていて。  それよりも。 「……どうしてわたしの名前を知っているの」  いきなり全部飲み込むなんて無理なのだ。 「なんなのあなたたちは」 どうして兄のことを知っているのか。わたしのことを知っているのか。あの少女はなんなのか。何もわからないまま押し寄せて来て、怒りが今にも爆発しそうだった。なんだか泣きそうにもなってくる。いい加減にしてと叫びたかった。  こちらがどう思っているのかわからない彼等の片方が、笑みを浮かべて話し出す。 「僕等はね、トーヤと同じ組織の魔術師なんだよ。トーヤに聞いたかな、名前のない組織。誰か適当に付けちゃえばいいのに」  ね、と同意を求めて同じ顔のもう一人の肩に腕を回す。身を寄せられた方はそれに動じず、落ち着いた様子で口を開いた。 「私がミユ・ブルクで、こいつが弟のリウ・ブルク。名乗るのが遅くなって申し訳ない。君のことは燈夜に話を聞いていて知っていたんだ。リウ、」
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