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「何?」
「扉を繋ぎ直してきてくれるか」
「え……ええー、ちょっとー、なんで開けたままにしないの面倒じゃん」
「他人の家の玄関を開けたままで上がり込む奴があるか」
不貞腐れた顔になりながら、リウは彼等が出てきた扉の方に戻って行った。
「悪気があってことを起こす奴ではないんだ。気を悪くしたなら許して欲しい」
「……無茶苦茶だわ。何がなんだかさっぱりわからない」
声が震えていないか心配になった。 ミユは身を屈めて目線を合わせてきて、ぎこちない笑顔を作る。こちらは笑うのが下手らしい。
「本当に申し訳ない。色々と突然のことで、理解するのも難しいと思う。けれど私たちは君と話がしたいんだ」
玄関側から「繋がったよー」と知らせる声がする。どこと繋げているのかわからないけれど、きっと昔聞いたいくつもあるという世界のどこかのことなのだろうと見当をつけて、それなら今すぐ兄がいる場所に連れて行って欲しかった。
「どうだろう、こちらは食事の時間なんだ。一緒の席に着いてもらえるだろうか」
確かに何かいい匂いは漂ってきている。
「……荷物を置いてきます」
「ああ。ありがとう。扉の前で待っているから、ゆっくり支度をしておいで」
柔らかな言い方に、どこか燈夜兄さんを思わせるものがあった。彼も年長者だからだろうか。本当に信用していいのかわからないけれど、ミユの言葉は誠実そうに聞こえたので、それに従うことにした。
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