出会ってくれて、ありがとう。

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 それから、少しだけ時間が経って。 「あっ! プレゼントだー!」  乱暴に箱が持ち上げられ、ビリビリと紙の破ける音とともに、視界に光が差した。  眼前には──そう、ぼくが願ったあの子がいたのだ。  もしかして、ぼくをもらってくれたのは、この子なのか。 「あああー! ママっ、このこっ、あのときの!」 「良かったわね。サンタさんにきちんとお礼を言うのよ」 「サンタさん、ありがとう!」 「後でお礼のお手紙も書いてあげると、きっとサンタさんも喜ぶわ」 「うん、わかったー!」  母親と女の子の微笑ましい会話を聴いて、あの男の人は父親だったのか、とぼくは今更ながらに察した。  この場にはいないようだけれど、こんなに喜んでいる娘の姿を見られたら、あの人もきっと嬉しいだろう。 「うちにきてくれて、ありがとう! ずっとあなたがほしかったの!」  そして、このぼくだって、あの人に負けないくらい嬉しさで胸がいっぱいで、中身が溢れそうだ。  人に命を吹き込まれたものとして、こんなに幸せな言葉が他にあるだろうか。 「なまえ、なににしようね? うーん……」  ぼくを喜んでもらってくれただけでも十分嬉しいのに、なんと名前を付けてくれるという。  ひょっとして、ぼくは世界一幸せな作りものなんじゃないか?  ぼくが恍惚さえ抱いていたころ、女の子はうんうんとしばらく唸った後、ハッと目を見開いた。 「……そうだ! わたしが『あおい』だから、『あお』くんはどう?」 「あら、いいんじゃない。姉弟みたいで」 「えへへ、きょうだいだってー。じゃあ、あおくんはおとうとだね。きょうからよろしくね、あおくん」  そう言って、女の子はぼくをぎゅっと胸に抱きしめた。  感覚のないはずのこの体にも、彼女のあたたかさが伝わってくるような気がする。  ──『あお』。ぼくは、あお。彼女の弟の、あお。  なんて甘美な響きだろうか。一流の職人からの賛辞でさえ、彼女がくれた二文字には遠く及ばないだろう。  何もできないこの身ではあるけれど、せめてぼくが朽ちるそのときまで、彼女を見守り続けよう。  だって、ぼくは彼女の弟なんだから。  ──こちらこそ、よろしくね。あおいお姉ちゃん。  口には出せないこの想いが、どうか彼女に届くようにと、ぼくは祈った。
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