6.きつねラーメン

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6.きつねラーメン

それは衝撃の光景でした。 商店街の中の一軒の尾道ラーメンのお店に長蛇の列が出来ていました。 私の田舎ではラーメン屋の前に行列が出来ているのを見たことはありませんでした。 私はそのお店のラーメンに心が躍ったのですが、お父さんは長い行列にならんでまで食べようとはしませんでした。 「えっ、お父さん、こんなに並んでるんだよ、絶対に、絶対においしいよ!」 私は食い下がりましたが、結局私達が列に並ぶことはありませんでした。 その後、どうしても尾道ラーメンが諦められなかった私はあの行列店ではありませんでしたが、夜になってからラーメンを食べに連れて行ってもらったのでした。 あれから6年の月日がたち、その日私は昼食のために尾道駅で降りて商店街を散策していました。 水泳の部活で日焼けした肌に刺さるような夏の日差しが照りつけていました。 小学生の時、両親と尾道を観光した際に食べたラーメンの味が忘れられなくて、行列店のラーメンを並んで食べたのですが、記憶の中のラーメンの味とは何かが違いました。 「うら若き乙女がラーメン屋をはしごなんて」 私はあの時のラーメンの味が忘れられず、もう一軒だけ探してみることにしました。 私は父親にあの時のお店を確認するためラインを送りました。 私自身も頑張ってもう一度記憶を呼び起こしてみると、そのお店のラーメンにはお揚げが乗っていたような気もしました。
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