3.父の愛した着物

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しかし、熱を帯びた父の言葉とは裏腹に男の表情は冷然としていました。 「私は依頼主からこれを確実に処分してほしいと頼まれています」 男は落ち着いた雰囲気のまま父を諭すような口調で話し始めました。 「もし、今回の横流しが発覚すれば私自身の信頼という事業の大元を失ってしまいます、わかりますね、お金ではないのです」 その言葉を聞いて観念したように父は震える手で鞄から書類封筒を取り出しました。 「例の県営特別管理物件に関する資料です」 父は県庁の職員でしたので、県の事業に関する書類だと思われました。男は満足げな表情を浮かべると封筒を受け取りました。
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