ハコイリムスコ

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僕は毎朝決まった時間に起きる。体が勝手に起き出してしまう。長年同じ時間に起きているから癖になってきた。隣には同じ人。お婆ちゃんだ。お婆ちゃんは僕を外に出さない。「外は怖いんだよ」といつも言ってる。そして僕は知ってる。本当はお婆ちゃんの足が悪いことを。日常生活を送る分には問題ないらしいが、外に行くとなれば話は別だ。僕だって外に行ってみたい。でも外に行くのが大変なお婆ちゃんに言ったって困らすだけだ。我慢すればいいだけ。窓の中から外を毎日見ている。 ある時、ガタンと衝撃があった。目の前が真っ暗になった。家すらない。お婆ちゃんもいない。喋ろうとしても喋れない。その時声がうっすらと聞こえた。「もう電池が持たないね」僕ははっとした。今目の前が真っ暗なのは。お婆ちゃんがいないのは。電池が切れたから見えなくなっただけなんだと。僕は人形だった。僕がいつも毎朝決まった時間に起きていたのは、そうやってプログラミングされていたから。癖でもなんでもない。お婆ちゃんが僕を外に出さなかったのは人形の僕と一緒にいるところを他の誰かに見られたくなかったから。幼稚園児じゃあるまいし、外に出掛ける時に人形なんて持っていかない。お婆ちゃんの足が悪い、ということは嘘だった。 電池が切れた人形はいらない。僕はゴミとして、捨てられてしまう。さっき感じた衝撃は誰かが僕をごみ袋に入れたときのだろう。
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