第二十章 夜は静かに嘘をつく 五

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 俺は車に向かって歩き出したが、久住はあちこちをフラフラと見ていた。 「木積の所へは帰りたくないから、泊めてね。全く、変な奴と知り合ったよ。 ケツ掘られ過ぎて、男を辞めそうになったよ」  久住は独り言のように呟き、足を止めて頭を抱えてしゃがみ込んだ。 「……このまま、開発され続けたら、勃たなくなりそう……ほら後はさ、ドライに近いからさ……」  しかし、木積は勝手に久住のアパートを引き払い、引っ越しを終わらせてしまったらしい。 そこで、久住は木積の家にしか、帰れる場所がない。 「腰を痛めてさ……タクシードライバーは廃業かな……情報屋もな……木積が危険だと、 うるさいしな」  久住は葬儀屋のみに、仕事を絞ろうとしていた。 「十二村さんも来ているのですか?」 「ああ、十二村も乗せてきたよ。でも、十二村は埋葬方法に興味があるからと言って、 どこかに行った」  どうもタクシードライバーは辞めたと言いながら、運転してきたのは久住らしい。
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