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「あなた消火栓の上でなにやってるの?」
私は思わず聞いてしまった。特に面識があるわけではない。好奇心が刺激されると突飛な行動をしてしまう。この謎の少年に声をかけないわけにいかない。少年は消火栓の上に座っていた。消火栓は黄色で少し塗装が剥げている。そんな消火栓の上に少年は座る。
私は興味や好奇心が引き金になってドキドキして行動してしまう。
「待ち人未だ来ずだよ」
少年はなぜか笑顔だ。
「待ち人?」
「なかなか来ないと思う」
少年は白いロングのTシャツにジーンズ。私はセーラー服で少年と正面から向かい合っている。
「おねぇさんも待っているのかい?」
「ええ友達待ちだよ」
サイドツインテの髪が風に少し揺れた。
「早く来るといいね。」
「あなたの待ってる人も早く来るといいわね」
「待ち人未だ来ずだよ」
少年はニコリとわらう。屈託のないニコニコとした笑みだ。
私は少年が消火栓の上で誰かを待っていると思っている。私も待ち人未だ来ずといった感じで、少年の横に並んで空を見上げた。冬の空は乾いた青という感じで突き抜けている。
よくよく考えてみると、私は少年の謎をあまり解明できていない。好奇心の炎がふつふつと燃え上がる。
「これから来る人はどんな人?」
私はそっと切り出してみた。消火栓の上で人待ちする少年に会いにくる人とは、どんな人なのだろう。
「竹屋の火事のおやじって感じかな」
「竹屋?」
「口うるさいってことさ。ぽんぽんうるさい」
少年はニコニコしている。私はよくわからない感じではあるけれど、少年には興味津々であることはかわりがない。
「君の友達はどんな人なの?」
「友達は友達よ。それ以上でもない」
そうなんだ。少年は空を見上げた。友達は大事にしたいよね。
冬の人の流れは、寒々としている。時はながれてゆく。私はただ待っているけど、少年は消火栓の上でワクワクの雰囲気をまとっている。なにかが違う。それがわかるとおもしろいのだけど。
「なぜ消火栓の上で待っているの?」
「目立つでしょ。火の見櫓じゃ高すぎる」
さっぱりと答えられた。目立つって・・・。火の見櫓?
「なんだかおもしろいね。あなた」
「そうかい?君も面白いし興味深いよ」
少年は真剣にうなずき、こちらを向いて笑顔がこぼれた。
私はよくおかしいとか、面白いとか言われるけど、そういう意味なのかな。
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