絆…(其ノ一)

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「あのね。オイラの おとぅは からだが よわくてね。おしごと しなかったから おかぁとおにぃが、おてんとさんが 沈むでしょ そしたら、おしごといくんだ。 おとぅとオイラは おるすばんしたよ おとぅは、咳がコンコン止まらくて キツいって だから お座りながら 寝るんだ。だから オイラは おひざに すわるんだ。そしたら …よしまる いるから おとぅは さみしくない… って 言っていたよ。おとぅは 座りながら、ずっと寝てたから、つかれたみたいね。おめめあけなかった。 おにぃとおかぁが、 おしごとから 帰ってきたらねぇ、泣いていたよ。おとぅはお布団にねたよ。おすわりは 終わったから、今 おすわりして いるからね キレイなおかぁ、まっていてね!」 七の招きを保留し よし坊は、一之進のあぐらに座りながら 実の父親の ぬくもりを 思い出し 小さな 足を 上下に ばたつかせて、 母とは違う 男親の 大きな 身体に 包まれて、母と兄を 心細く待つていた事を 思い出しながら ひとり遊び している。 「トン トン トン・・」 と 小さく 口ずさみながら 楽しそうに… 小さな足。両足だったり、片足をばたつかせ たりして 畳に打ち付ける。 一之進も一緒に「トン トン トン・・」と よし坊のうたと一緒に 小さく 相手をした 七も、一緒に口ずさむ… よし坊は 短い間に、2回も家族を 失っていた。 一之進と、七は よし坊が あきるまで そのまま 待つことにした。 義丸(よしまる) を守らなければ、、 七は泣きたい気持ちを我慢し 七のおっかさん、かよは 七の背中に 隠れながら、泣いていた… よし坊の これからは 七を筆頭に、七のおっかさん かよ。おとっつぁん 六助、三羽ガラスの八吉、九太、十松 そして 若同心一之進、に守られる事になる。 あの日が、来るまで。 義丸(よしまる)は 一生分の愛情を 受ける事になる それを、 糧に 人生の分岐点を 迎える日が来るまで。
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