絆…(其ノ一)

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絆…(其ノ一)

七の羽織を おねしょで濡らした事を、 よし坊は、傷心して泣いている。 両手に濡れた羽織を抱き抱えて、 しきりに「ゴメンナサイ…」と べそをかいて謝っているその 姿が愛しくて、 七は ついさっきの、 一之進が取った意味不明の 行動を すっかり 忘れてしまっていた。 立って泣いているよし坊の、手を掴んで 七は、また、優しくなだめている 「…よし坊、そんなに、大事にしなくていいよ 羽織なんて洗えば いいことだ。 敷き布団も 干せば乾くし ね、よし坊、着替えないと風邪引くぞ・・」 そんな ほほえましい。風景を 一之進は、 七の部屋に訪れた時から、妬いている 自分も 七とああなりたいのに、、と、、 幼い よし坊に。嫉妬して、畳にあぐらを かいて座り、口に手を当て自分の存在を 咳払いして 訴えている 「オホン、、オホン、、」と まるで、子供だ。 ・・・・・・・ 一方 母屋方、七の部屋が騒がしい・・ 七のおっかさん かよは、一之進をそ知らぬ顔で 七の元へと 見送った後・・ 気がきではなかった やはり、止めるべきだった・と、後悔して来て 岡場所帰りの一之進が、七の部屋に行くのを 止めればよかったと、終いには ハラハラもしてきた。 七が、怒ったかもしれない・・・ 様子を見に行く事にした。 台所は、昼を終えて、一段落ついていた。 片付けは 山のように 溜まっているが、 三羽がらすと、六助が 居れば充分だと思い。 前掛けを外し、 そそくさと 台所から抜けようと 支度をしていたら 器を片付けていた 六助がかよを呼び止めた。 「かよ、そぅ いや、 七とよし坊は 、まだ寝てんのかい?ん?」 「何だか母屋が、 騒々しいな・・」 騒がしさに 気付いた六助に 「あたしが、様子を見てくるよ。 よし坊が起きて泣いちまったんだろ? あんたは 三羽がらすと 片付けお願いね…」 と、隼のように 切り返して、 かよが 母屋へ向かう 「かっ、かよっ、起きていたら よし坊 ここへ 連れてきなよ。はち、きゅう、とう 三人の 兄ちゃん達紹介すっからよ」 何だかんだ言って、よし坊を 気遣う六助・・ その横で、片付けをしている 八吉が、 不機嫌そうに 嫌味をいい始めた。 「おいらは、弟にチビなんぞ いらないね!」 と八吉。続いては 九太 「そぅだよ! チビは うるさくって 苦手だよ!」 それから、十松 「おいらは、、 どんな奴か 見て決めるよ。」 と、冷静な十松。珍しい、、 「そぅかよ!裏切りもんが!」 と はちが鳴く! 「ひとりだけ、いい人ぶんなよ」 と、きゅうが喚く。 「何言ってんのさ!よく見りゃかわいいチビ だったぞ!見てないのかよ!馬鹿だな!」 とりわけ、変な機転がよく利く じゅう。 台所は 瞬く間に、三羽がらすの言い合いっこ になった・・・
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