マドンナの公演

1/1
前へ
/34ページ
次へ

マドンナの公演

惑香が彼と会うのはこれで何回目だろうか。惑香始め総勢5人のゼフィルスの会の面々が音楽コンサートなどに行くたびに、どういうわけか、そのコンサートの合間、もしくは終了後のロビーなどで、彼女たちが歓談している時などに彼は必ずあらわれた。偶然に来合わせた風をよそおってあらわれるのだったが、それが何回もかさなると誰かを目当てに…?と勘繰りたくもなるのが人情だ。彼女たちがいつ、どこの、誰のコンサートに行くなんて彼にわかるはずもなかったからだ。その日はマドンナの公演が日本武道館で行われ、ふだんからマドンナに傾倒していた彼女たちは、熱狂的なミーハーたちにまじって年甲斐もなく(?)入れ込んでいた。特に美枝子が。彼女は惑香たち5人からなるゼフィルスの会の統領で、仕事はプロのショーダンサーだった。その統領の美枝子が26で、他の面々、学校の教師の基子が28、惑香と同じOLの麦子が25、フードコーディネーターの恵も25だった。惑香は24才で最年少だったが「惑香が一番大人びている」とふだんから美枝子に云われていた。ゼフィルスの会の何たるかはのちほど語ることにしようが、とにかく、その日の公演の合い間、ロビーのソファに腰掛けて興奮醒めやらぬままに彼女たちがマドンナを語り合っていた時に、またしても義男は現れた…。 「止しなさいよ、美枝子。こんなに大勢の人の前で踊り出したりして。私恥ずかしい!」マドンナの振りを真似してはそれに即興のパントマイムを入れ、ダンスを披露し出した美枝子に口に手を当てた基子がもの申した。顔を赤くした基子は本当に恥ずかしそうだ。しかし麦子が「やれ!やれ!美枝子。私たちゼフィルス軍団の美しさを際立たせろ」とけしかけ、恵が「かっちょいい、美枝子。ブロードウエイ仕込み!」と辺りに喧伝をする。実際黒のパンタロンスーツに身を包んだ長身でスレンダーな美枝子の踊りには目を見張るものがあった。ブロードウエイ仕込みというのも本当で彼女は以前に渡米し、オーディション暮らしを何年もしていたのだ。ロビーでくつろぐ他の観客たちを前に臆するようすもない。 【シシド・カフカ。美枝子のイメージ…?下のURLをユーチューブで見てね】 https://www.youtube.com/watch?v=ldR2hFaC8iE&list=TLPQMDYxMDIwMjAA6NCLCelaGQ&index=1456c9415-94b4-4663-9229-559342cb296b
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加